週刊金曜日に小論「がれきの広域化は、復興予算の流用だ」掲載‏

環境ジャーナリスト、青木泰さんから最新情報が届きました。


【青木泰氏より】

「がれきの広域化は、復興予算の流用だ」小論を週刊金曜日に掲載していただきました。

23日発売で、1週間経過しましたので、皆様に添付してお伝えします。

今回は今年9月に宮城県が県議会に提案したがれきの委託業者との契約変更問題と、復興予算の流用問題を絡めて問題提起させていただきました。

宮城県は、県が処理するとしたがれきの総量を建設ゼネコンからなるJV(ジョイントベンチャー)に委託していましたが、がれきの総量を大幅に下方修正したことに伴い、委託量の変更と、契約金額を変更したものです。

宮城県への取材を通し、6月ごろから、がれきの総量の見直し後(5月21日)も、契約金額を変えない宮城県に対して、建設ゼネコンに処理していないがれきの代金まで支払うのか?と問いただしていましたが、ようやく契約変更しました。

今日まで契約変更に時間がかかったのは、がれきの委託量を下方修正すれば、がれきの広域化を進める上で、「がれきの処理に困っているから広域化をお願いしたいと言えなくなるからだと考えています。

しかしがれきの総量が減少したと言うことに加え、もともと宮城県では、県内市町村を石巻ブロック他4つのブロックに分け建設ゼネコンからなるJVに、委託していたのに、そのことを広域化しようとする自治体には隠し、がれきの広域化量を算定していました。

つまり行き先が決まっているがれきを、2重にカウントして全国に運ぼうとしていたのです。

宮城県が県の采配で業務委託した事例も、全国の自治体に広域化委託しようとした分も、国からがれきの処理費として100%の交付金が出されます。

2重カウントしていたものは、当然2重に交付金を取ることになり、税金の詐取に当たります。北九州市市民検討委員会らの住民とこの点を宮城県に通知通告するとともに、民事での訴えも行って行きました。

その結果宮城県のがれきの大半を占めていた石巻ブロックでの契約を、今回のように大幅変更したのです。

がれきの処理は、建前として、市町村が処理し、市町村が処理できない分は、県に委託し、県が処理できない分は、全国の自治体に広域化するとなっていましたが、環境省によるがれきの広域化は、宮城県と岩手県で合計約400万トンと当初発表されました。

その内訳は以下の通りでした。

全体    401万トン

宮城県   344万トン

(石巻B)  (293万トン)

岩手県    57万トン

これらを実行するにあたって、環境省は広域化予算を組んでいたわけですが、東京ベースで考えても、約2500億円の広域化予算を組んでいたはずです。(1トン6万円×400万トン)沖縄や九州、関西まで運ぶ計画だったため、実際はもっと巨額の広域化予算を組んでいたはずです。

しかし先ほども言ったように宮城県の場合、これらは、県内での処理方針を決めていたため、全く無駄で、国税を詐取する予算だったのです。大震災と津波の被害に対してまるで火事場泥棒のような許せない対応です。

ちなみにがれきの処理のための予算は、H23年度第1次、第3次、そしてH24年度を含め、約1兆円を超す予算を環境省は立てました。

しかし当初発表したがれき量2250万トンを、阪神淡路や中越地震の時の1トン当たり2.2万円で計算しても約5000億円で、処理できます。1兆円余の予算になったのは、広域化を考えてのものです。

上記の点については、これまで講演会やインターネット上で訴えてきましたが、今回の小論は、復興予算の流用問題に絡め、こうした点の一端を明らかにするために書きました。

私はこれらの調査を経て、復興予算の流用問題は、環境省のこのような無駄遣いを知った他の省庁が、自分たちもおいしい思いをしたいと飛びついた結果ではないかと考えています。

環境省の広域化がこのように出鱈目に進められてきていた以上、宮城県だけでなく、岩手県でも同様の事がないのか?当然検証する必要があります。
 

週刊金曜日 2012年11月30日号
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