9月11日 九州ひまわりプロジェクトは、福岡地裁小倉支部に震災がれき搬入・焼却禁止の仮処分命令を申し立ていたしました。

震災がれき搬入・焼却禁止仮処分命申立書
 

先に訴状内容をアップしておりましたが、大変複雑なので、弁護士がわかりやすく現状をまとめたものに差し替えました。
弁護士には別の文書を無断で真似されるという大変苦い経験がありますのでアップされていた訴状を見られた方は、道義上 無断で転用するなどということのないようにお願いいたします。(転載不可)

今回の申し立ては民事訴訟となります。
債権者は九州ひまわりプロジェクト代表 村上さと子はじめ市民5名。
訴訟代理人弁護士は、当初からひまわりプロジェクトと共に震災がれき問題に取り組んでいる斎藤利幸弁護士。
債務者は北九州市 北橋健治市長です。

本日まで事実を公表しなかったのは、双方の書面が揃う前にメディア等に取り上げられることにより、裁判所の判断に影響が出るのを避けたかったからです。
また、周囲から裁判に過度の期待をされることが予想され、それに安心して市民運動の力が弱まることを懸念したからです。
仮処分は大変難しい訴訟です。
私たちは、この裁判も反対運動のひとつに過ぎないと捉えており、今後も他に考え得るあらゆる手段を講じていきます。

9月26日には、市民、北九州市双方の書面が出揃いました。
裁判所の結論は10月半ばには出ると思われます。





震災がれき搬入・焼却禁止の仮処分申立と
現状についての説明
1 仮処分申立に至る経過
1 本年911日、北九州市相手に、福岡地方裁判所小倉支部に対して、震災がれき搬入・焼却禁止の仮処分命令の申立を行った。
  この仮処分が認められれば、現在北九州市が行っている石巻市からの震災がれき搬入・焼却は阻止されることになる。

2 この仮処分の申立については、がれきの搬入・焼却による健康の危険性を心配する市民からは切望されてきたものであり、認められれば画期的なものとなる。
  行政相手の仮処分はなかなか認められないのがこれまでの慣例であり、かなり高度の訴訟技術を駆使しないと、同じ轍を踏むことになる。
  そして仮処分に対する期待は非常に大きく、これが失敗すると、反対運動は自信を失って、分解してしまう危険性も危惧された。むしろ、この様な一事に全てをかけるよりも、地道な反対運動を継続し、市民の共感を得ていくことが大事と思われ、仮処分の申立を回避してきた。

3 しかし、市の方は反対運動の高まりを完全に無視してがれきの搬入・焼却を一方的に進め、913日にはがれきを搬入し、17日からは焼却を始めるという姿勢を明らかにしてきた。

4 他方、反対運動を継続するうちに、対象となる石巻ブロックのがれき量が半分以下になり、宮城県議会の対応も、広域処理不要との方向性を示してきている等の状況の変化が起きてきた。
  それのみでなく、北九州市が対象としている石巻ブロックの震災がれきは、昨年の916日に宮城県議会の議決を経て鹿島共同企業体(JV)と全量処理委託されていたこと、がれきの処理方法として、宮脇昭氏により、汚染がれきを日本中にばらまかなくとも、これを埋めて防潮堤となる程度に土盛りをし、土地本来の広葉樹を植林をして、森の防潮堤を作るという画期的な方法が提案されていること、北九州市へのがれき搬出・焼却は全く不要であり、むしろ議会の決議を得た鹿島JV契約と矛盾する違法がある、いう事実が明らかになって来た。

5 通常行政のやることというものは、少なくとも半数以上の者の利益になり、他の少数者の利益に反するということがせいぜいである。しかるに、今回のがれき搬入・焼却によって北九州の市民で利益を得るものは誰もいない。市長は、「石巻を救いたい」を強調しているが、石巻市は鹿島JV契約がそのまま履行されれば何の支障もなくがれきが片付くのであり、北九州市ががれきを搬入・焼却しても石巻市民が救われるわけでもない。かえって、余分な税金がかかり、震災地には復興資金が下りないという不都合もある。

6 この様な状況を踏まえると、行政相手といえども、これだけ違法・不必要・税金の無駄遣いが明確ながれきの搬入・焼却は阻止せざるを得ないだろうという確信がみなぎってきた。
  即ち、充分可能性のあるものとして本件がれき搬入・焼却禁止仮処分の申立を行った。
2 仮処分申立の内容
1 訴訟テクニック的なことは省略する。
2 申立書の基本にしたのは、
① 北九州と宮城県の本焼却に関する協定並びに契約の違法性
    鹿島JV契約が宮城県議会の承認を経て発効し、がれきに関する権限は鹿島JVに移転しているのに、その震災がれきの北九州市への搬出につき、議会の承認を得ていない違法・無効
 ② 広域処理の不必要性と北九州市への搬出目的の不当性
 宮城県議会で明らかになった、がれきの搬出目的が、北橋市長(並びに環境省)に恥を欠かせない救済策である事実(被災地の救済という目的違反)。
 ③ 広域処理方法の不当性
   NHKで明らかにされた、復興資金の使われ方の違法・出鱈目と、
   それに付け加えた、北九州市へのがれき搬出・搬入・焼却処分の無駄遣い
 ④ これらの違法行為により、申立人(債権者)の権利が侵害されようとしている。
3 北九州市の答弁(反論)
 ①の点 
  鹿島JVとの委託契約は請負契約だから、がれきに関する権限は鹿島JVに移転しない。
 ←(債権者の反論) 委託契約が請負契約だからその対象物に関する権限が移転しないなどということは誤りである。
+ 委託契約による鹿島JVの債務内容はがれきの移転・破砕・選別・中間処理・最終処分であり、そのどれをとっても鹿島JVに処理権限が移転しないと、義務の履行が出来ない。少なくとも本件契約では処理権限が移転することが、契約の本質的内容といわなければならない。
 
 ②・③の点
  市の答弁=債権者の保全されるべき権利とは無関係なので議論しない!!
  ← 前代未聞の答弁である。
    違法性の主張に対して、答弁なし。
・裁判所から見れば、債権者の主張を認めたといわざるを得ないだろう。
・なぜこのような普通では考えられないような対応をしたのか。裁判所が行政を救うという慣例を過信したのか。
しかし、違法性の主張に対して、全く反論しないという事態に対して、裁判所が救いの手を伸ばすことが出来るのか。論理的に不可能と思われる。
裁判所の判断が注目される。
全国より、大注目していただきたい。
④の点
   搬入・焼却によって債権者らの権利(生命・身体・健康)が侵害されるという立証がない。
← 反論
  ・ 無関係の市民同士と異なり、市と市民の関係は、保護し保護される関係にある。そのために税金を払っている。市が違法(①・②・③)にも、汚染がれきの搬入・焼却という危険行為をしたときに、市民の健康被害の可能性が主張されたときには、ガレキ焼却と健康被害は関係ないことを、市側が主張立証すべき。それがない限り権利侵害の危険性を否定できない。
  市は市民の健康被害の訴えに対してその調査すらしていない。調査して初めて焼却と健康被害には因果関係がないと言えるのであって、そもそも「因果がない」と主張する基礎にかける。
 4 結論
  ・ 北九州市の答弁書に対しては債権者側は既に反論済み。
これに対して裁判所は「さらに反論するか」と市側に問いかけをした。通常の行政側代理人は、必至になって引き延ばしをするようである。これで2年も引き延ばしされてしまえば(ただ本件ではそれほどの引き延ばしは不可能)、止める対象のがれき搬入・焼却自体がなくなってしまうので、「訴えの利益なし」ということで訴えは却下されることになる。
しかし市側の代理人は、本件仮処分手続において、そのような卑怯な手は使わなかった。私達は対立した依頼者から委任を受けた者として対立関係にあるが、この様な北九州市の代理人の態度は立派であったと思う。
  ・また行政に肩入れする裁判所も、行政側の言いなりになったり、行政を勝たせやすくするように、暗にアドバイスをしたりする場合がなきにしもあらずであるが、今回の裁判所はそのような気配すらなく、すんなり結審(審尋の終了)し、近々判断をするとしている。本件は行政相手としては珍しく、相当に期待の持てる仮処分事件であると思われる。
 ・ ただし、これががれきを止める全てではない。結果はともかく、これまで通り一人一人が、粛々とがれきを止める活動を継続することが大事であろう。
私も、今後ともいろいろ訴訟の提起を考えている。一人一人が出来ることを工夫して、絶対にこの違法・不当・不必要ながれき搬入・焼却を止めるという活動を続けることが大事であろう。
                                  以  上