8月20日 宮城県議会に広域処理をやめるよう
お願い文を出しました。
お願い文を出しました。
依頼市民(賛同人)は約400人です。
がれきは、津波から人々を守る「森の防潮堤」に
宮城県議会議員の皆様へ
ー お願い ー
依頼市民 = 別紙の通り
2012(平成24)年8月20日
〒811-4305 福岡県遠賀郡遠賀町松の本5-2-9
斎藤利幸法律事務所
市民(別紙)代理人弁護士 斎 藤 利 幸
冠省 私は北九州市において、震災がれきについては現地処理をすべきであり、なおかつ、がれきは焼却すべきでないという主張をしている市民(別紙の通り)の代理人です。宮城県と北九州市が行おうとしているいわゆる広域処理について以下の通りご報告し、お願いをしたく、本書を差し上げるものです。
1 がれき搬出等の法的根拠
(1) 宮城県と北九州市は、石巻ブロックの可燃がれきにつき、いわゆる広域処理の一環として、年間3万9500トンの混合可燃がれき(以下「本件がれき」といいます)の搬出・搬入・焼却を行う事(以下「本件がれき処理」といいます)としています。
(2) この本件がれきを含む石巻ブロックの震災がれきについては、平成23年9月6日に宮城県と鹿島共同企業体(以下「鹿島JV」といいます)との間に、契約金1923億6000万円という巨額での「業務委託(仮)契約」が締結され、貴議会の議決を得て発効しております(以下「本件業務委託契約」といいます)。
(3) 本件業務委託契約により、石巻ブロックの震災がれきの全てについて、その管理・処理の権限と義務は鹿島JVに帰属し、宮城県には何ら存在しないものです。
(4) 「県外処理」と「広域処理」の関係
ー 北九州市の詭弁 ー
① この点に付き、北九州市では、宮城県が本件がれきを北九州市に搬出するのは、本件業務委託契約の中に、県外処理分があり、これに基づいて北九州市との搬出・搬入・焼却をするのだという説明がなされていると説明しています(甲1)。
② しかし、鹿島JVの本件業務委託契約における県外処理分と、宮城県が行おうとしている広域処理とは全く異なり、以下の理由で根拠となりません。
ⅰ 鹿島JVはトンあたり3万円で契約しております。鹿島JVが県外処理を予定したとしても、これを大幅に超える処理は、企業として、絶対にあり得ません。県外処理を広域処理の根拠とすることは不可能です。
ちなみに、北九州市の試験焼却における処理関係費は運送費17万5000円、焼却等処理費金16万7000円、合計34万2000円という非常識極まりない価格です。北九州市は批判を受け、これを極力低く抑えるとし、本焼却の処理関係費の見積もりは、トンあたり金9万円前後としています。しかし、鹿島JVが契約をそのまま履行すればこの9万円でさえ全く不要な金額です。
ⅱ 万が一、県外処理を広域処理と仮定するとしても、それは鹿島JVが行えることであり、何ら権限のない宮城県が出来ることではありません。
ⅲ 鹿島JVが県外処理として予定している先は、全て私企業であり、実質下請けです。宮城県等自治体が私企業に委託したものを、さらに北九州という自治体に再委託(下請け)に出すことなど地方自治法上許されません。
以上から、したがって、鹿島JVの本件業務委託契約に予定されている「県外処理」をもって、宮城県が北九州市に搬出するための「広域処理」として説明しようとするのは、詭弁という他ないものです。
(5) 議会の議決の無視
最も問題なのは、本件がれき処理方策は、宮城県議会の権限を無視するものであるということです。
① 議会の議決により、本件業務委託契約は発効しました。この瞬間より宮城県は石巻ブロックのがれきに関する権限を失いました。
② 従って、宮城県にがれきに関する権限は一切なく、よって、宮城県が本件がれき処理をしようとするのであれば、まず、再度議会の議決を受け、契約内容を変更する必要があります。
③ 従って宮城県が、契約変更の議決を受ける前に、がれきに関する権限を行使しようとすることは全て、この議会の議決を経た本件業務委託契約に基づく鹿島JVの権限と義務に反し、議会の権限を無視する違法行為です。
④ 宮城県は北九州市との間に、本年5月14日、本件がれき80トンに関する試験焼却のためのがれき搬出・搬入に関する委託契約を締結し、実際北九州市は、5月21・22日の2日間に渡ってがれきの焼却を実施しました。
しかし、これは貴議会の議決を完全に無視したものです。即ち貴議会による本件業務委託契約の有効な変更議決に基づかずに、宮城県が無権限のままで行われたものであり、違法・無効は明白です(地方自治法第2条16・17項、同96条1項5号)。
⑤ⅰ 今般、宮城県と北九州市は、本焼却に向けた「災害廃棄物の処理に関する基本協定」を締結しました(甲2)。
ⅱ これに引き続き、業務委託契約が締結される予定とされている(協定書第6条)が、本日までにはまだ未締結です。
ⅲ しかし、これらの協定や契約は、宮城県にない権限を、あるものとしてのものであり、議会の議決を完全に無視するもので、試験焼却と同様に、完全に違法・無効です。
⑥ⅰ 私達はこの様な本件がれき処理の違法性を再三北九州市や宮城県に伝え、これを止めるよう警告等を発してきました。
ⅱ しかし、両者ともこれを無視し今日に至っております。
ⅲ そこで、やむなく両者(形式的には宮城県と北九州市)に対してその違法性を明らかにするための訴えを提起しております。
ⅳ もし貴議会が以上詳細に説明した違法性にもかかわらず、本件がれき処理を肯定するようなことになれば、貴議会に対する信頼性にも問題を残すことになるのではないでしょうか。しかし、がれきの処理につき、「いのちを守る森の防潮堤」の決議をされた賢明な貴議会においては、そのような間違いはないものと信じております。
(6) 貴議会による違法・無効の治癒はありえるか
① 宮城県も北九州市も、上記違法無効は当然承知しており、この重大な瑕疵を、貴議会の開催が予定されている9月の議会において払拭しようとしているものと思われます。しかしこの様な弥縫策は次に述べる理由で、到底許されないものです。
②ⅰ まず、宮城県(知事)はこの方策として、本件業務委託契約の変更という形で議会の議決を求めるものと思われます。
しかし、一旦議会の慎重審議の上議決を経た契約は、その後の事態の推移から見て、とりわけ不合理な内容となるといった事情変更による合理的理由がなければ、認められるものではありません。そうでなければ、執行者である知事の意図次第で、前の慎重審議の議決を、実質的に無視できることになるからです(参照:一事不再議の原則)。
ⅱ 問題は、本件においてこの様な契約変更をするための事情の変更が、認められるかということです。結論的にいえば、本件がれき処理を合理的に説明する事実はなにもなく、かえって、鹿島JVの契約額の減額をした上で、契約通りに履行を促すべき事情にあるということです。
ⅲ その最も強い理由が、震災がれきの著しい減少です。最も重要な事項ではありますが、この点については議員の皆様が熟知している事項ですので、説明を省略します。
要するに、宮城県による本年5月21日の震災がれきの見直しにより、石巻ブロックのがれきは、685万4000トンから312万トンへ、即ち373.4万トン(54.5%)も減少してしまったのです。
ⅳ 従って、事情変更を理由に本件業務委託契約を変更しようとするのであれば、がれき減少による契約額の変更(減額)のみが合理性を有し、それ以外の変更は出来ないというべきです。これは事態を熟知しておられる皆様には簡単に理解されることと思います。
ⅴ このことは、最近にいたり宮城県が、北九州市以外には九州への搬出を全て取りやめ決定していることからも、明らかな事実です。
③ⅰ ところが宮城県は、この変更の機会を利用して、一旦鹿島JVに移転した震災がれきに関する処理権限・義務の一部を取り戻そうとするものと思われます。しかも正面から提示したのでは否決されるに決まっていますので、容易に気付かれない方法で紛れ込ませるものと思います。
ⅱ しかしそのような内容と方法は、議会をだまし討ちにするものに他ならず、到底許されないものです。
議員の皆様におかれましては、宮城県(知事)がこの様な違法な手段で北九州市との試験焼却や本焼却の違法性を免れようとしていないかどうか、慎重な対処をお願い致します。
2 広域処理の不必要性と北九州市への搬出目的の不当性
(1) 以上のように、自治体における契約理論から見て、宮城県と北九州市が行っている協定や契約締結行為の違法・無効は明らかですが、それのみにとどまらず、以下に述べるとおり、目的(動機)においても全く筋の通らないものであり、国費の乱費でしかありません。この面から見ても違法であることが明らかなものです。
即ち、北九州市の北橋市長は、市民に対し、再三「石巻の要請により」「石巻市を救う」ために本件がれきの受入をすると説明してきました。
しかし、我々が確認したところでは、北九州市が広域処理に手を挙げる以前に、石巻市から救援を要請した事実はありませんでした。
(2) また、宮城県議会のやり取りを拝見すると、北九州市が石巻市を救う状況にはなく、宮城県知事の本音は、全く逆に、いわゆる広域処理にいち早く手を挙げた北橋市長に恥をかかせないために、本件がれきの搬出をすることが明白となっております。詳細はご存じの通りですので省略させて頂きますが、この様な全く逆転した目的、即ち北橋市長のメンツを保つために、膨大な税金を投入することが許されるものでないことは誰の目にも明らかです。
しかし、宮城県知事が情宜上北橋市長のがれき搬出の要求を断れないものであれば、以上のように、議会の権限を無視した違法・無効を理由に、堂々とがれき搬出を断って頂きたいと思います。北九州市の主張するトンあたり9万円としても、8万㌧前後の搬出・焼却処分には72億円もの税金の無駄遣いが発生します。その他に、北九州市においては、がれき受入のために発生するかもしれない風評被害やその他の諸々の対策を余儀なくされ、その費用も膨大なものです。全て国費でまかなわれようとしております。これらが北橋市長のメンツの維持のための代金なのです。
(3) しかも、本来鹿島JVがそのまま最終処理をすれば全くかからない(トンあたり金3万円の契約の中で処理される)費用を、北九州市に運ぶだけで、全く別個のがれきであるかのような錯覚を起こさせ、国庫金からの支払をさせるものであり、我々が国庫金の詐取であると主張しているゆえんです。
(4) また、今回の7月31日付け協定書を見ると、本件がれきは、雲雀野町にある第二次仮置き場において破砕・選別等の処理を行ったものを予定しています(第3条(1))。
即ち、北九州市は、鹿島JVが本件業務委託契約の履行として、第一次仮置き場から運搬し、破砕し、選別したもの、即ち鹿島JVがほとんど履行の終わったものを、横取りして焼却しようとしているものです。
北九州市への余計な運搬等をせず、鹿島JVがそのまま最終処理すれば事足りることは明白で、この内容を見ても、北九州市への搬出・焼却は、北橋市長のメンツを保つためだけに行われる国費の完全な濫費であることは明白です。
(5)① さらに、北九州市がこの様な出しゃばりをせずとも、東部ブロックが来年の7月中には担当がれきの処理を終わる予定であり、10万トンの余力のあること、仙台市においても来年の5月には自己内処理が終わる予定であり、ここでも十分な余力がでることも公知の事実です。
② この点については、鹿島JVが本件業務委託契約をする際の「災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)技術提案書」の「2災害廃棄物等処理業務計画」の「2ブロック内処理計画」において
『ブロック内で処理できないものについては、県内で被災後に処理能力が確認できた全施設を優先使用。不足分のみ県外処理』
と明記されています。これを変更してまで、北九州市という極めて遠隔地に搬出する理由は皆無です。
(6) 要するに、北九州市への本件がれきの搬出の動機は、広域処理の本来的目的とされる被災地の救済とは全く無関係のものであり、国費を濫費・詐取しようとする背信性のあるものであることは明らかです。貴議会が適正に権限を行使して、この様な違法な本件瓦礫処理を止めて頂けますようお願い致します。
3 最後に
私達は、被災地の復興には全く役立たない、いわゆる広域処理には反対しておりますが、心から被災地の真の復興を望んでおります。
この観点から見て、がれきの焼却処分のみでなく、これを地中に埋めて土盛りをし、植栽し、森の防潮堤とし、併せて尊い命を奪われた方々の鎮魂の森、慰霊の森としようとする貴議会の「いのちを守る森の防潮堤」決議を高く評価し、是非ともその実現をして頂きたいと願っております。そして、無駄な広域処理は廃止され、その予算は、この優れた復興策実現のために使われるべきものと確信しております。その暁には、こぞって植栽事業に駆けつけたく存じます。
何卒宜しくお願い致します。
以 上