広域処理はもう不要。東京都下もついに議員が動き出した。

がれきの受け入れを進める行政に対して、市民が提出した陳情に対して、東京都下でも議員から真面目な賛成意見がようやく出されました。
皆様にご紹介するとともに、拡散をお願いします。
東京都三多摩地域の柳泉園組合(東久留米市、西東京市、清瀬市)が、宮城県女川町のがれきを受け入れる問題で、柳泉園組合の構成市の一つである清瀬市の9月議会に提出された陳情に対して、宮原りえ議員が、現在宮城県議会で提案されている契約変更議案を取り上げ、がれきの受け入れに反対したり、調査と審議を求める陳情に賛成する討論を行ってくれました。
陳情の賛成討論(意見)全体としても、災害廃棄物の広域化処理に反対する立場を、内部被曝問題から説明した傾聴に値する意見内容になっています。
宮城県がすでに、民間委託している契約内容を半減化する提案を出している中で、(がれきは、宮城県現地では、一度委託した量さえ確保できず、下方修正する中で、)なぜ、東京に高いコストをかけて持ってくる必要があるのかを問う意見となっています。
 
9月清瀬市議会 陳情16号・17号・19号(柳泉園ガレキ受け入れについて)賛成討論 
2012年9月27日宮原理恵
 
陳情第16号について、賛成の立場から討論をいたします。17号、19号についても関連がありますので、まとめて討論をします。
 
災害廃棄物の広域処理については、私は反対の立場をとっています。
そして清瀬においては、この問題についての議論が不十分であり、市民にも十分な説明がいき届いているとは思えません。
 
まず、大前提として、放射能の特性から判断すると、とにかく、「発生してしまった放射性物質については、特定の場所に封じ込めて長期間の厳重な管理をする」ことが鉄則であり、拡散させるべきではありません。
 
災害廃棄物の迅速な処理が、被災地の復興の一助になるのは確かです。しかしながら、廃棄物の受け入れについては、安全性の確保が大前提です。
「安全かどうか」ということで、大きく見解が分かれるところですが、はたして、基準値以下であれば安全と言えるのかどうか。
お考えいただきたいのは、原発事故前の日本では、IAEAの国際的な基準に基づき、セシウム137が100ベクレルという基準だったものが、事故後、大幅に規制が緩和され、焼却後8000ベクレルという80倍の基準になったという点です。
その数値は、福島県内限定の基準として設けたものを、十分な説明もないまま広域処理にも転用したもので、根拠が疑問視されています。そのため、いくつかの自治体が受け入れを見合わせたり、独自基準を設けて受け入れをしています。
 
放射線防護の国際的合意として、汚染されたものを汚染されていないものに混ぜて「危険でない」とすることは、禁止されています。
日本政府は現在、食品とがれきについて、この「希釈禁止合意」に違反していると、ドイツの放射線防護委員会が、日本政府に勧告を出しています。
そして、汚染された廃棄物の各県への配分、焼却、および焼却灰の埋め立てなどは、重大な過ちであり、即刻停止するべきだと言っています。
「原子力利用と引換に、どれだけの死者と病気を許容するのか?」と懸念を表明すると同時に、日本国民に対しても、早急に専門知識を身につけて行動を起こすように呼びかけています。
日本弁護士連合会も、広域処理の危険性を指摘する声明を、昨年9月に出しています。
放射性物質は、ひとたび環境中に漏れ出したら取り返しがつかないのです。
 
放射能による被害は、ガンにとどまらず、免疫の低下による様々な健康障害があります。
チェルノブイリエイズという言葉をご存知でしょうか。内部被曝が原因と思われる免疫の低下により、感染症にかかりやすい、風邪の長期化、貧血などの症状が、周辺地域の子どもたちに見られています。東京都内でも最近、季節はずれの感染症が子どもたちの間で流行していることはお耳に入っていると思います。
原爆ぶらぶら病という病気は、原爆投下後に被爆地に入った人々が、「なんだか体の調子が悪い」、「倦怠感で動くことができない」と訴え、でも、どんなに検査をしてもどこもおかしくはない、もう少し様子を見ましょうと言ったら、翌朝布団の中で死んでいたというようなこともあったと、肥田瞬太郎先生は証言しています。
その不可解な症状は、筋肉にセシウムが取り込まれたことによる内部被曝が原因だったのではないかということがわかってきています。
 
放射能の被害については、歴史から学ぶべきです。
私は、以前、鎌仲ひとみ監督のもとで、2003年の映画『ヒバクシャ-世界の終わりに』という作品の制作と配給に携わりましたが、その仕事の中で、世界中のヒバクシャの姿と言葉に触れてきました。
アメリカの核兵器工場の周辺で、チェルノブイリで、劣化ウラン弾が使われたイラクで、ウラン鉱石などの採掘場で、また、世界中の核実験の影響で、多くのヒバクシャが生み出され、苦しみながら命を落としています。そして、被曝した妊婦から、多くの赤ん坊が、先天性障害児、いわゆる奇形児という痛ましい姿で産まれています。
同様のことが戦後のヒロシマ・ナガサキでも起きていたことは、あまり知られていません。そしてチェルノブイリでは、25年以上経った今も、人々の健康障害は増え続けています。
それらヒバクシャの姿を嫌というほど見てきた私は、少なくとも自分の目の届く範囲で、このような被害を繰り返してはならない、余計なヒバクシャを増やしたくない、という信念のもと、今、ここに立っています。
しかしそういった被害の多くは「放射能との因果関係が証明できない」として、公式には認定されないままです。
 
私はその映画の仕事で、京都大学の小出裕章先生、原発に警鐘を鳴らし続けている方ですが、その方にお会いした際、「なぜ学者によって言うことが180度違うのですか?」と聞いてみました。答えは明快でした。「私は出世を望まなかったからです」。原子力政策を推し進めてきた日本では、原子力に疑問を呈する学者は出世できない、ということでした。
今、日本で、権威のある高名な学者の多くが「放射能安全説」に立っていることの説明がつきます。
今、私たちは、歴史から、証言や記録から学ぶべきです。
因果関係の証明が難しいならばなおのこと、予防原則に立って、即時、被曝の拡散を止め、高濃度汚染地帯からはコミュニティごと避難をする、少なくとも子供や妊婦は集団疎開させるという措置を取るべきです。そして、除染の可能な地域を、徹底的に除染する。間違っても拡散すべきではありません。
 
汚染された災害廃棄物の広域処理により健康障害が生じれば、それは人為的にもたらされた二次被曝と言えます。幼い子ども、病気を持った方々など、弱い立場の人々は、生命を脅かされる可能性もあります。それは「生存権の侵害」と言えるのではないでしょうか。
清瀬のリーダーとして、高名な学者のとなえる放射能安全説に立つのか、それとも、世界中のヒバクシャの声を聞くのか。渋谷市長の見識が問われています。
 
群馬大学の早川由紀夫先生のつくった汚染マップを見ればわかるように、焼却が始まる前の清瀬は、比較的汚染の少ない地域です。ホットスポットや食べ物に注意すれば、幸いにして、住み続けることができている。その環境を、死守すべきです。
今、清瀬市が行うべきことは、放射能や有害物質の混入のおそれがぬぐえない廃棄物を受け入れることではなく、被災地からの避難者や保養を受け入れることです。そして、安心して暮らせる町、安心して子育てができる町であり続けることです。
札幌の上田市長の言葉を上げるまでもなく、渋谷市長には、清瀬市民の健康と安全を守る責務があります。
 
では、被災地の復興はどうするんだと思われるかもしれません。
宮城県議会は、今年の3月に全会一致で、災害廃棄物を利用した「命を守る森の防潮堤」推進議員連盟を結成し、7月には決議をしています。横浜国立大学の宮脇昭教授が長年の研究を経て提唱しているもので、自民党宮城県議の相沢光哉議員は、6月の一般質問の中で「ガレキを使って防潮堤を作れば広域処理の必要はない」とはっきり述べています。そして、議連として、宮城県や国に対して働きかけをしていますが、県知事側と対立し、議会の声を無視するかたちで、広域処理は進められつつあります。
また、廃棄物の量についてですが、宮城県は、昨年の9月に鹿島JV685万トン、金額にして約2000億円の業務委託契約を交わしていますが、量が310万トン程度までに減ったことで、現在、宮城県議会に契約変更議案が提出されており、変更契約の手続きが進められています。
685万トンが310万トンへと、375万トンもの量が減り、契約を変更せざるを得ないにもかかわらず、東京都が受け入れつつある量が、わずか6万トン。「処理しきれないから受け入れる」ということだったはずです。東京都がその量を、輸送費をかけてまで受け入れる必要性が本当にあるのでしょうか。その6万トンのために数十億の税金が注ぎ込まれます。
 
柳泉園として、清瀬市長としても、宮城県議会の動き、廃棄物の現在の状況を調べ、ぜひ、広域処理の必要性、それが本当に被災地の望んでいることなのか、復興支援と言えるのかについて再度検証していただくことを要望いたします。ひょっとしたら、「災害廃棄物受け入れ」という形での支援は、受け入れ側の一方的な支援の押し付け、自己満足に過ぎないものかも、しれません。
 
以上のような理由から、私は、柳泉園での、災害廃棄物の焼却には反対の立場です。
そして、清瀬においてはこの問題についての議論が不十分であり、市民への説明が不十分で、市民の理解を得られているとは言えないことを、改めて主張します。
 
なお、陳情についてですが、憲法に違反するかどうかの判断そのものは、法律の専門家ではないと難しい部分があるのは事実です。しかしながら、私は、市民が生命を脅かされるような危機感を持っているという事実を重く受け止め、「憲法違反の可能性がある」ということで、16号と17号について、賛成をします。
(陳情18号については、市長会の合意の法的根拠が不十分であり、また、周辺住民の理解を得たとは言えないと考え、陳情には賛成をいたします。←<18号は、陳情の提出者が違ったため、まとめて討論できず>)
 
19号については、先ほどのべたように、鹿島JVとの契約の量が大幅に減り、契約を変更せざるをないのに、東京や北九州が受け入れる必要性があるのかについて、厳正な調査が必要であるという意味合いで、この陳情の趣旨に賛成いたします。